巷で、脅迫罪で警察は動かないと言われていますが、それは誤解です。
令和5年の犯罪白書によると、脅迫罪の認知件数は4,037件で、検挙件数は3,393件、検挙率は84%です
(令和5年警察白書「犯罪動向」参照)
3,393件もの脅迫罪が検挙され、検挙率は84%もあるのですから「脅迫罪で警察は動かない」わけではありません。
では、なぜ“警察は動かない”という情報が散見しているのでしょうか。
当記事では、
- 脅迫罪で警察が動かないと言われる理由
- 脅迫罪で警察が動きやすいケース
- 脅迫罪で警察が動かないときの対処法
- 脅迫罪で警察が動いてくれない場合の相談窓口
上記について、詳しく解説します。
脅迫罪で警察が動かないと言われる3つの理由
脅迫罪において警察が動かないと言われる理由は、以下の通りです。
【理由1】民事不介入が基本原則
警察には「民事不介入の原則」という考え方があります。民事不介入とは、犯罪に相当しない民事の争いについて介入しないというもので、脅迫においても、ただ「威嚇された」「脅された」といった情報“だけ”では警察は動かないケースが多いです。
【理由2】客観的に見て事件性が低い
脅迫に該当する言葉が“客観的に見て”事件性があるかどうかというのも重要な要素です。
例えば、「殺すぞ」という言葉自体は脅迫罪に該当しますが、その背景に友人同時の冗談で発した言葉だとすれば、事件性があるとは判断されません。
一方で、見知らぬ人から突然絡まれ「殺すぞ」と言われた場合は、客観的に見ても恐怖を感じる(=事件性がある)ため、脅迫罪として警察が動いてくれやすくなります。
このように、客観的に見て事件性が低いと判断された場合は、警察は動かないと思った方がいいでしょう。
【理由3】証拠が不十分
たとえ脅迫の事実があったとしても、それを証明することができなければ警察は動いてくれません。特に脅迫という行為自体、抽象的な要素が多いので、「こういう風に言われた」だけでは証拠不十分で泣き寝入りすることが大半です。
ですので、警察に相談する場合は、出来る範囲で証拠を揃えておくようにしましょう。
脅迫罪における警察が動きやすいケース
脅迫罪において警察が動かないケースについて解説しましたが、言い方を変えれば、警察が動かないケースを理解した上で行動すれば、脅迫罪として立件することは十分可能だということです。
具体的には、以下の通りです。
客観的に見て事件性があると判断できる
前述の通り、警察に動いてもらうには客観的な視点は重要です。
例えば、
- 知らない番号から電話がかかってきて「お前の家燃やすぞ」と言われた
- 別れた彼氏から「これまで撮った写真ばらまくぞ」と言われた
- 見知らぬ人から絡まれ「殺すぞ」と言われた
- 会社の同僚から「○○をバラされたくなければ言うことを聞け」と言われた
このように、客観的に見ても恐怖を感じる言動だった場合は事件性が高いので、脅迫罪として成立する可能性が高まります。
客観的証拠が揃っている
脅迫罪に限ったことではないですが、犯罪事実の立証責任は捜査機関側にあり、証拠がなければ、有罪にすることはできません。
そのため、客観的証拠を揃えることは非常に重要であると言えます。具体的な証拠物については後述しますが、多ければ多いほど有利に働きますので、警察に相談する前に入念な準備をしておくことが大切です。
脅迫罪で警察が動かないときの2つの対処法
脅迫罪で警察が動かない場合の対処法は、以下の通りです。
- 証拠を集める
- 被害届・刑事告訴状を提出する
証拠を集める
脅迫罪を成立させるにあたって、証拠は非常に重要です。
有効な証拠物としては、以下の3点が挙げられます。
メールやLINEなどの履歴
メールやLINEなどの履歴には、脅迫を証明する文章以外にも日付や時間、ID(アカウント)など、数多くの情報が明記されている可能性が高いです。ただし、LINEには「送信取り消し」機能があるので、加害者側が履歴を消してしまう前にスクリーンショットや印刷しておくことをおすすめします。
電話・会話の録音データ
電話・会話の録音データは、単体でも客観的証拠物として有効ですが、メール・LINE履歴などの物的証拠と合わせることで、非常に強力な証拠物となります。ただし、どんな録音データでも良いわけではなく、「加害者との会話を証明する内容」であることが重要です。
具他的には、
- 加害者の個人情報が特定できるような内容
- 恐怖を表す感情が読み取れるような内容
最低でも、上記2点は押さえるようにしましょう。
客観的事実に基づくメモ
トーク履歴や録音データを用意できない場合は、脅迫を受けた事実をまとめたメモも証拠物として有効になる可能性があります。ただし、証拠物としては弱いものになりますので、警察が動いてくれない可能性も。「証拠物はないけど何としても警察に動いてほしい」という場合は、後述する専門家に相談することも検討してみましょう。
被害届・刑事告訴状を提出する
脅迫行為に遭った場合は、速やかに警察へ被害届を出すことが大切ですが、合わせて刑事告訴状を提出することで、警察が動いてくれる可能性が高まります。
被害に遭ったことを申告するのが被害届であることに対して、加害者を処罰してほしいと明確な意思を伝える手続きが刑事告訴状になります。
告訴状には捜査義務が生じるため、証拠がない場合にも有効な手段であると言えます。
ただし、誰かを貶める目的で嘘の申告をした場合、虚偽告訴罪(=3ヵ月以上10年以下の懲役)に問われることもありますので注意しましょう。
※被害届・告訴状について、別記事で詳しく解説しておりますので、合わせてご覧ください。
脅迫罪・恐喝罪で被害届・刑事告訴状を受理させる方法を弁護士が解説!
警察が動いてくれない場合は弁護士に相談
脅迫被害に遭ったのに警察が動いてくれない場合は、弁護士への相談を検討しましょう。
弁護士に相談するメリットは、以下の通りです。
【メリット】法的な観点から警察が動くようにアドバイス・サポートを受けられる
弁護士は、警察が動いてくれないトラブルにも柔軟に対応してくれます。
具体的には、
- 被害届・刑事告訴状の提出の流れをサポート
- 証拠収集方法のアドバイス
- 加害者の特定
- 加害者への慰謝料請求
- 刑事告訴のサポート
警察は事件性がなければ動いてくれません。一方で、弁護士は、例え脅迫罪成立の見込みがなくても被害者のサポートをしてくれますので、大きなメリットであると言えるでしょう。
【デメリット】弁護士費用がかかる
弁護士に依頼する以上、弁護士費用は発生します。
とはいえ、弁護士に相談したら必ず費用が発生するわけではなく、無料相談を設置している弁護士であれば、そのリスクも回避できます。
当事務所も、無料相談を設置している法律事務所ですので、お気軽にご相談ください。
脅迫罪でお困りの方はグラディアトル法律事務所へ
脅迫罪で警察が動かない理由について解説しました。
警察には、「民事不介入の原則」という考え方があるので、曖昧な情報だけでは動いてくれません。警察に動いてもらうには、有効な証拠の準備、適切に被害届・刑事告訴状を提出することが重要ですが、それら全てを個人で行うのは困難です。
弁護士に相談することで警察が動く可能性が高まりますので、一人で悩まず、まずは相談してみましょう。
弁護士の依頼を検討している方は、気軽に当事務所の無料相談からお問い合わせください。