美人局の恐喝被害対処法!逮捕・犯罪・手口・判例などを含めて弁護士が徹底解説!

当法律事務所の弁護士には、脅迫・恐喝・強要などの被害にあったという相談が数多く寄せられています。

その中でも、リベンジポルノなど男女間の問題がきっかけで脅迫等の被害にあうケースが多いです。

今回解説をする美人局(つつもたせ)という男女間での脅迫・恐喝の手口として古くからある類型です。時折、芸能人やYouTuberが美人局の被害にあったり、加害者側に加わっていたなどのニュース事例も目にしますね。

この記事では、美人局の意味をわかりやすく解説するとともに、その手口、どんな犯罪に該当し、逮捕されるのか、実際の事件ニュース裁判例を紹介しつつ美人局被害の対処法を解説をしていきます。

美人局とは

美人局とは、男女が共謀して恐喝することを企て、女性が対象者の下心に付け込んで性的関係を持ち、これをネタに男性が対象者を脅迫して金銭を強請る(ゆする)恐喝手法のことをいいます。

美人局は、「つつもたせ」と読みます。「びじんきょく」ではありませんので、ご注意ください。

できる限り美人局の意味を分かりやすく説明すると、以下のようになります。

  • 男女がターゲットを恐喝しようと共謀する
  • ターゲットに女性がアプローチして性的関係(肉体関係)を持つ
  • ターゲットと女性が性的関係を持つ直前、最中、直後などに男性が現れる
  • 男性がターゲットに「俺の女に手を出したな」などと因縁をつけて脅す

ターゲットの選定方法やアプローチ・恐喝の際の因縁の付け方については、美人局の手口として、以下で紹介します。

美人局の手口

昔からある典型的な美人局の手口としては、夫婦が共謀し、妻が恐喝相手となる男性を誘って性的関係を持ち、その後に夫が「俺の女に手を出したな」と言って金銭を強請るという手口があります。

この場合には、自分の妻と不倫・不貞行為をしたのだから、慰謝料を払えという理屈自体は成り立ちそうです。もっとも、初めから夫婦間で共謀して、不倫慰謝料をネタにして相手方から金銭を恐喝するために性行為をしておりますので、法律上保護すべき平穏な婚姻関係があるとはいえませんので、不貞慰謝料請求は認められないでしょう。

現在の美人局の手口としては、出会い系サイト、マッチングアプリやTwitterなどのSNSを利用して対象者を探し、アプローチすることが多いです。合コンサイトで美人局の相手を探して犯行に及んでいる事件もありました。

美人局の際の脅し文句としては、以下のものが多いです。

  • 家族・職場・学校などにバラすと脅す
  • 未成年に対する違法な援助交際だと脅す
  • 強制性交(強姦)罪だと脅す

美人局は、以上のような脅し文句に対して、美人局の被害にあった被害者も、自身の行為に後ろめたさを感じていたり、場合によっては被害者の行為が犯罪に該当するのではないかと思い警察などには相談できず、脅され、金銭を支払ってしまうことが多いのが特徴です。

美人局の加害者側の特徴としては、未成年の不良少年が加害者になる事件も多いです。複数の不良少年が共謀し、少女に対象者と援助交際・パパ活をさせて、俺の彼女・妹・友人になんてことをしてくれるんだ、まだ未成年だぞ、警察に言うぞと脅すような事例があります。

美人局は犯罪か?逮捕されるのか?

美人局はどんな犯罪に該当し、何罪で逮捕されることがあるのでしょうか?

脅迫罪、恐喝罪、強盗罪、詐欺罪、児童福祉法違反の罪が考えられますので、以下、解説をしていきます。

美人局と脅迫罪

脅迫罪は、人を脅して怖がらせる犯罪であって、個人の意思の自由を保護法益とする犯罪です。

脅迫罪の構成要件は、人の生命、身体、自由、名誉又は財産に対して、畏怖させるに足りる程度の害悪を告知することです。

美人局の加害者が、家族や職場などに犯罪行為をバラすなどと被害者の名誉に対する害悪の告知をする場合などが脅迫罪に該当します。

(脅迫)
第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

刑法

美人局と恐喝罪

恐喝罪は、暴行や脅迫によって人を畏怖させて、財物や財産上の利益を交付させる犯罪であって、被害者の財産及び意思決定や行動の自由を保護法益とする犯罪です。

恐喝罪の構成要件は、人の反抗を抑圧させない程度の暴行・脅迫によって、人を畏怖させ、財産・利益を交付させることです。恐喝罪での脅迫は、人を畏怖させる程度の害悪の告知であるという点では脅迫罪と同様です。

しかし、恐喝罪の場合には、脅迫罪と異なり、害悪の告知の対象に限定がありません。また、恐喝罪では、金銭を要求し脅しとることが要件となっています。

美人局の加害者が、被害者の行為が犯罪に当たるから被害届を出すなどと伝えることも恐喝罪の脅迫に該当する可能性があります。

(恐喝)
第二百四十九条
 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

刑法

美人局と強盗罪

強盗罪は、暴行や脅迫によって人の犯行を抑圧させて、財物や財産上の利益を強取する犯罪であって、被害者の財産及び仁学的法益を保護法益とする犯罪です。

強盗罪の暴行や脅迫は、人の犯行を抑圧する程度のものであることが必要です。

美人局の犯人が、被害者に対して殴る・蹴るなどの暴行を加えている事例で強盗罪となっています。また、被害者が怪我をしてしまった事例では、強盗致傷罪で逮捕されている事例もあります。

(強盗)
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

(強盗致死傷)
第二百四十条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

刑法

美人局と詐欺罪

詐欺罪は、疑罔行為により人を欺き、錯誤に陥らせ、これにより財物や財産上の利益を交付させる犯罪であって、被害者の財産を保護法益とする犯罪です。

美人局の場合には、多くの場合が暴行や脅迫を用いているので、恐喝罪や強盗罪で逮捕される事例が多いですが、妊娠をしたなどと嘘をついて金銭を交付させた場合などには詐欺罪に該当します。

(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

刑法

美人局と児童福祉法違反(淫行をさせる罪)

児童福祉法は、児童の心身の健全な育成保を保護する法律です。

不良少年などの未成年による美人局の事件では、美人局に関与した女性が18歳未満の児童であることがあり、その際に、美人局として被害者と性的な行為をさせた少年らが児童福祉法違反の淫行をさせる罪に該当し、逮捕された事例もあります。

最高裁の判例(最決平成28年6月21日)によると、児童福祉法上の「淫行」とは、児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいい、児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為は、「淫行」に含まれるとされています。

美人局の事件では、被害者側の男性は出会い系サイトやSNSなどで知り合った援助交際の相手やパパ活の相手のことが多く、「淫行」い該当するでしょう。

また、同判例は、淫行を「させる行為」とは,直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をいうとされています。

美人局の加害者側の男性(少年)と女性(少女)のの関係性によっては、事実上の影響力を及ぼして淫行をさせたと言える場合もあるでしょう。

なお、淫行の相手方になる男性の行為が「淫行をさせる行為」に該当することもありえますが、美人局の被害者側の男性が加害者側の女性に対して事実上の影響力を及ぼして淫行をさせる行為に該当する可能性は低いかと思います。

第四条 この法律で、児童とは、満十八歳に満たない者をいい、児童を左のように分ける。

第三十四条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
六 児童に淫行をさせる行為

第六十条 第三十四条第一項第六号の規定に違反した者は、十年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

児童福祉法

美人局の被害者側は犯罪に該当する?逮捕は?

以上で見てきたように、美人局の加害者側は、脅迫罪、恐喝罪、強盗罪、強盗致傷罪、詐欺罪などに該当し、逮捕される可能性があります。

そして、美人局の手口として、被害者の行為が犯罪に該当するのだと指摘し、そのことを家族や職場、警察などにバラすぞと脅してくる手口があります。

では、美人局の被害者の行為がなんらかの犯罪に該当し、逮捕されてしまう可能性はあるのでしょうか?

まず、未成年の不良少年らによる美人局事件の事例で多い、未成年(18歳未満)の女性と援助交際・パパ活をしたとして、恐喝してくる場合、18歳未満との性行為などはどのような犯罪に該当するか解説します。

美人局被害者と児童買春等防止法

18歳未満の児童に、お金を払い又は払う約束をして、性交や性交類似行為(性器や乳首などを触る又は触らせる行為)をした場合には、「児童買春」児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)に該当する犯罪行為にあたります。

(定義)
第二条 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
2 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。
一 児童
二 児童に対する性交等の周旋をした者
三 児童の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者

(児童買春)
第四条 児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律

美人局被害者と青少年保護育成条例・青少年健全育成条例

また、18歳未満との真剣交際ではない性行為や性交類似行為、淫行は、各都道府県の青少年健全育成条例・青少年保護育成条例などにより、処罰対象となっていることが多いです。

青少年育成条例違反の対象となる真剣交際ではない性行為や性交類似行為、淫行とは、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔しまたは困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交または性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交または性交類似行為をいうものであると解されている(最判昭和60年10月23日、福岡県保護育成条例「淫行」の解釈参照)

東京都の青少年健全育成条例では、以下の行為が処罰対象となっている。

  • 「青少年」(18歳未満の者)と
  • みだらな性交又は性交類似行為を行うこと

この「みだらな性交又は性交類似行為」については、上記の最高裁判例の「淫行」の解釈と同様に考えられるでしょう。

美人局の被害者が加害者側の女性と会い性行為をするシチュエーションは、出会い系サイトやSNSで知り合い、お金を渡す援交やパパ活といった場面が多いので、真剣交際とはいえず、「みだらな性行為」「淫行」と評価されるでしょう。

(定義)
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 青少年 十八歳未満の者をいう。

(青少年に対する反倫理的な性交等の禁止)
第十八条の六 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。

(罰則)
第二十四条の三 第十八条の六の規定に違反した者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

東京都青少年の健全な育成に関する条例

以上のように、美人局の加害者側の女性が18歳未満である場合、パパ活や援交相手をした美人局の加害者は、原則として、児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律や各都道府県の青少年健全育成条例などに違反する犯罪行為になります。

もっとも、被害者が加害者側の女性が18歳未満である可能性にすら気が付かないような場合には、故意(未必の故意)がないとして、犯罪にはならない場合もあるでしょう。

美人局被害者と強制わいせつ罪・強制性交罪(強姦罪)

では、美人局の加害者側の女性が18歳以上であった場合はどうでしょうか?

この場合、「児童」や「青少年」には該当しないので、上記の法律や条例には違反しません。

もっとも、美人局加害者の女性との間に同意がなく、女性の反抗を著しく困難にする程度の暴行や脅迫によりわいせつ行為や性行為を行った場合には、強制わいせつ罪や強制性交等罪などに該当する可能性があります。

(強制わいせつ)
第百七十六条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

(強制性交等)
第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

(準強制わいせつ及び準強制性交等)
第百七十八条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

刑法

美人局の被害者の犯罪該当性と逮捕のまとめ

以上で見てきたように、美人局の被害者側も犯罪行為に該当することがあり、その場合には逮捕される可能性はあります。

しかし、本記事の記載にあたって、美人局の被害者側が逮捕されたニュースは探したのですが、見つかりませんでした。また、当法律事務所の弁護士が担当した複数の美人局関連の事件においても、被害者側が逮捕された事例はありませんので、美人局の被害者が逮捕される可能性は低いものであると考えています

美人局事件の逮捕ニュース

前述したように、美人局の被害者側が逮捕されたニュースは探したのですが、見つかりませんでした。

ここでは、美人局の加害者側が逮捕された事件のニュースについて、見ていきましょう。

最新の美人局の逮捕ニュースについては、以下の記事もご参照ください。

恐喝罪と児童福祉法違反で逮捕された美人局事件のニュース

「俺の彼女だ」 ホテル出てきた学生に美人局、4人を逮捕

美人局(つつもたせ)の手口で現金を脅し取るなどしたとして、県警少年捜査課と旭署は20日までに、恐喝児童福祉法違反(淫行させる行為)などの疑いで、藤沢市高倉、無職の男(22)、横浜市港南区の無職少年(17)ら男女4人を逮捕、再逮捕した。

ほかに逮捕されたのは、大和市深見東1丁目、自称会社員の男(22)、厚木市温水、無職の女(26)の両容疑者。

4人の逮捕、再逮捕容疑は共謀して8月24日、横浜市に住む中学3年の女子生徒(14)に売春相手として同市在住の男子大学生(21)を引き合わせ、大和市内のホテルで女子生徒にみだらな行為をさせた、としている。さらに、ホテルから出てきた男子大学生に「(女子生徒は)俺の彼女だ」「学校や親にばらすぞ」などと因縁をつけ、藤沢市内で計60万円を脅し取るなどした、としている。

同課によると、無職の男は「(女子生徒が)18歳未満とは知らなかった」などと供述、容疑を一部否認している。ほかの3人は認めている。女子生徒は逮捕された少年と交際していた時期があり、少年と交友関係にあった無職の男らに美人局を強要されたという。

神奈川新聞 https://www.kanaloco.jp/news/social/case/entry-209992.html

この美人局の逮捕事件のニュースでは、「(女子生徒は)俺の彼女だ」「学校や親にばらすぞ」などの害悪の告知をして、畏怖した被害者から60万円を脅し取っているので、恐喝罪に該当します。

また、美人局に加担していた14歳の女子生徒は、美人局を強要されていたということなので、強要をしていた男側が、淫行をさせたとして、児童福祉法違反でも逮捕されています。

強盗致傷罪で逮捕された美人局事件のニュース

SNS版美人局? 女性と待ち合わせ→男2人現れ因縁 柏署、強盗致傷容疑で逮捕

現代版の美人局(つつもたせ)か―。女性を装いSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を使って男性を誘い出し、現金を強奪したとして、柏署は7日、強盗致傷の疑いで柏市豊四季の土木作業員、佐藤雅昭(23)、住所不定の無職、山田駿(22)両容疑者=ともに窃盗容疑で逮捕=を再逮捕した。

2人の再逮捕容疑は共謀し昨年6月15日午前0時55分ごろ、JR北柏駅北口などで、男性会社員=当時(29)=に因縁を付けて顔を殴りけがをさせた上、現金約4万7500円などが入った財布を奪った疑い。男性は左ほお骨を折る全治3カ月の重傷を負った。

同署によると、男性がスマートフォンのコミュニケーションアプリで知り合った女性と待ち合わせをしていたところ、2人が現れてトラブルになったという。同署は2人がアプリ上で女性を装い、男性とやり取りしていた可能性があるとみて調べている。

2人は知人同士。いずれも「金は取っていない」と容疑を一部否認している。

千葉日報 https://www.chibanippo.co.jp/news/national/576854

この美人局の逮捕事件のニュースでは、SNSを利用して被害者を誘い出した事例で、現代版美人局と評されています。

この事件では、加害者側が被害者の顔を殴り、ほお骨骨折の全治3ヶ月の傷害を負わせており、強盗致傷罪で逮捕されております。

美人局の裁判例(恐喝・強盗致傷で実刑判決)

美人局の加害者が逮捕された事件のニュースを見てきました、実際に起訴され、裁判となると、どのくらいの量刑になるのでしょうか。

その一例として、美人局で恐喝罪や強盗致傷罪で逮捕・起訴され実刑となった裁判例(札幌地判令和2年9月9日)をご紹介します。

この裁判例の事実関係は、美人局を計画した被告人らが、出会い系サイトで呼び出した被害者の男性と仲間の女性との間で口淫(フェラ)をさせ、これをネタにして、「こいつ、家出してた俺の妹なんだけど。」「未成年に何してるのよ。淫行は犯罪だよ。警察行くか。」「警察行きたくないっていうなら、どうするんだ。」「逮捕されたら、最低でも罰金はあるだろう。ニュースに出たら大変なことになるんじゃねえのか。」「罰金なら50万はいくんじゃねえのか。せめて半分の20万ぐらいは用意するのが筋じゃないの。」などと脅した恐喝事件と、同様の美人局の手口で被害者に現金を要求したが、被害者が応じなかったため、顔面を拳骨で殴るなどの暴行を加え、全治1か月の鼻骨骨折等の傷害を負わせた強盗致傷事件です。

裁判所は、懲役3年6月の実刑判決を言い渡しました。

(量刑の理由)
 本件各犯行は,被告人が,共犯者らと共にいわゆる美人局をした判示第1の恐喝,恐喝未遂事件と,同じように美人局をした被害者に対して暴行まで加えた判示第2の強盗致傷事件である。

 本件で量刑の中心となるのは,法定刑の重い判示第2の強盗致傷事件である。まず,被告人らが被害者に対する暴行を加えたことについて計画性があったとは認められない。また,証拠上認められる傷害結果は重大なものとはいえないし,暴行態様は,凶器等を使用して共犯者全員で長時間にわたって暴行を加えたなどといった悪質なものであるとは認められず,強盗致傷罪の暴行のなかでは軽いものであるといえる。そして,現金を奪い取ることは未遂に終わっている。したがって,本件は強盗致傷罪が想定する種々の類型の中では軽い犯情といえる。

 そして,一連の美人局を行う中で被告人が共犯者間で相対的に上位の立場にいたことや,Eの暴行を容認する発言をして暴行のきっかけを作ったこと,Eらによる暴行を認識していて止める機会があったにも関わらず,一切止めることがなかったなどの事情に照らせば,被告人の責任を軽く見ることはできないが,被告人は,直接暴行を加えていない上に,検察官が主張するようにリーダー格としてEらに暴行を指示したということも認められないことから,共犯者の中では主に暴行を加えたEの次に重い責任を負うにとどまる。

 そうすると,被告人の犯情は,強盗致傷事件の中ではかなり軽いものといえ,酌量減軽をした処断刑の範囲の中でも最下限の懲役3年程度の刑事責任を負うというべきである。

 他方,判示第1の恐喝,恐喝未遂においては,被告人は主導的,積極的に脅し役として中心的役割を果たしていることが認められ,また,本件犯行は,被告人が未成年者をグループに加えるなどした上で,計画的,常習的に美人局を行っていたなかで行われたものであり,この点は,被告人の責任を重くするものとして考慮する。

 その他の情状を見ると,被告人が客観的な事実関係を認めていること,被告人の母親が公判廷で被告人の指導監督を誓約し,就労先を含む更生環境を用意する意向を示していることや,被告人には罰金前科1件以外に前科がないことなどの事情が認められる。もっとも,更生環境についてはこれまでの経緯からみると十分に整っているとまでは評価できない。また,いずれの事件についても全く被害弁償をしていない。

 以上のとおり,犯情を前提にして,その他の情状も考慮すると,被告人に対して,弁護人が主張するように最下限の懲役刑としてさらに執行猶予を付するのは相当ではないが,その刑期については主文のとおりとすることとした。
(求刑 懲役7年)

札幌地判令和2年9月9日

美人局の対処法!どうすればいい?

以上、美人局について、その手口、犯罪該当性、逮捕事例のニュース、裁判例について見てきました。

では、美人局の被害にあわないためにどうすればよいのでしょうか?

また、美人局の被害にあってしまったらどうしたらよいのでしょうか?

その対処法について解説していきます。

美人局の予防法・見分け方

前述したように、美人局は出会い系サイトやマッチングアプリ、TwitterなどのSNSにより相手を選び、誘い出す傾向にあります。

そのため、出会い系サイト等を使用しないのが1番の予防法になるでしょう。

また、出会い系サイト等を利用する場合にも、相手方をよく見極める、すぐにホテルに誘うなど性行為までのステップが短い場合には警戒してください。美人局の加害者側は、脅す口実をつけて金銭を奪うのが目的ですから、できる限り効率的に動きたいわけです。そのため、ホテルへ行くなどの性行為までのステップがスムーズな傾向にあります。

当然のことではありますが、美人局の加害者から弱みに付け込まれるような犯罪行為はしないようにしましょう。

相手の女性が18歳未満の可能性が少しでもあるのであれば、公的な身分証により年齢確認をおこなって、児童買春罪や青少年健全育成条例などに該当しないように気をつけてください。

美人局の対処法!弁護士・警察に相談を!

以上の予防法を実践して、美人局の被害にあわないようにしてもらうのが一番良いのですが。。

もし、美人局の被害にあってしまったらどうしたらいいでしょうか?

美人局の対処法としては、弁護士・警察に相談をするのが一番良いです。

一度、恐喝・脅迫の被害にあい、お金を渡してしまうと、相手からはカモだと思われ、何度も何度も脅され、お金を恐喝され続けてしまうこともあります。

早急に弁護士や警察に相談して、適切な対応を取ることが必要です。

前述したように、事実関係にもよりますが、美人局の被害者側が逮捕される可能性は低いと考えられますので、警察への相談や被害届の提出も有効な手段です。被害者側が逮捕される可能性があるのではないかとの心配が大きいようであれば、まずは弁護士に相談してください。

弁護士は守秘義務を負っていますので、たとえ相談者の行為が犯罪に該当する場合でも、その情報を外に漏らすことはありません。

美人局の被害にあってしまったと思ったら、できる限り早く、弁護士に相談するようにしてください。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。