出会い系サイト・マッチングアプリでの脅迫・恐喝被害の対処法を弁護士が解説〜わいせつ動画の拡散を仄めかし逮捕された事例をもとに〜

出会い系サイトやマッチングアプリを利用して、脅迫・恐喝の被害にあってしまう方も多いです。

今回のニュース事例では、マッチングアプリで出会ったネカマ(女性を装った)男性から下半身を露出した動画を送るよう求められ、応じたところ、この動画を拡散されたくなければ金を払えと恐喝された事例です。

この恐喝犯人は恐喝罪で逮捕され、ニュースになりましたが、他にも60人程度、同様の被害にあった人がいるようです。

本記事では、ニュース事例を紹介しつつ、出会い系サイトやマッチングアプリでの脅迫・恐喝被害にあってしまった場合に対処方法等について弁護士が解説します。

わいせつ動画拡散すると脅して恐喝罪で逮捕された事例

まずは、ニュース記事をみてみましょう。

女性になりますしマッチングアプリ 男性恐喝のベトナム人逮捕

女性になりすましてマッチングアプリで知り合った男性を恐喝したとして、ベトナム人の男が逮捕されました。同様の手口による被害者は60人にのぼるとみられています。

 恐喝の疑いで逮捕されたのは、ベトナム人で無職の〇〇容疑者(23)です。〇〇容疑者は女性になりすましてマッチングアプリで知り合った男性(20)に下半身を露出した動画などを送らせたうえ、「みんなに送ってもいいの?」と動画の拡散をほのめかし、現金3万5000円を脅し取った疑いがもたれています。

 〇〇容疑者は「友達がやっていたので真似をした。コロナで仕事がなくなり、ベトナムに帰るためにお金が必要だった」と供述しているということです。〇〇容疑者が使っていた銀行口座にはおよそ60人からあわせて187万円ほどの入金が確認されていて、警視庁は同様の手口で犯行を繰り返していたとみて調べています。

TBSニュース https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4284170.htm

わいせつ動画拡散と恐喝罪

恐喝罪とは、暴行や脅迫によって人を畏怖させて、財物や財産上の利益を交付させる犯罪であって、被害者の財産及び意思決定や行動の自由を保護法益とする犯罪です。

恐喝罪の構成要件は、人の反抗を抑圧させない程度の暴行・脅迫によって、人を畏怖させ、財産・利益を交付させることです。

恐喝罪での脅迫は、人を畏怖させる程度の害悪の告知であり、害悪の告知の対象に限定がありません。脅迫罪では、人の生命、身体、自由、名誉又は財産に対する害悪の告知というように、対象に限定がありましたが、恐喝罪の脅迫にはこれがないのです。

今回のニュース事例のように、「下半身を露出させたわいせつ動画を拡散させること」は、被害者の名誉権やプライバシー権に対する害悪を告知していると言えます。

そのため、恐喝罪における害悪の告知があり、これにより畏怖した被害者が犯人に対してお金を振り込んで、財物を交付させているので、恐喝罪が成立します。

(恐喝)
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

刑法

わいせつ動画拡散とリベンジポルノ防止法

実際にわいせつ動画を拡散されてしまった場合、リベンジポルノ防止法に違反するのでしょうか?

リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)とは、本人が第三者に見られることを認識した上で撮影を許可した画像・動画以外の画像・動画(私事性的画像記録)を公表し、公表目的で所持する行為を処罰する法律です。

本件ニュース事例のわいせつ動画についても、第三者に見られることを認識して撮影した動画とはいえないでしょうから、その動画を公表することや公表目的で所持することはリベンジポルノ防止法に違反すると考えられます。

出会い系サイト・マッチングアプリでの脅迫・恐喝被害の対処法

以上見てきたように、出会い系サイトやマッチングアプリを利用して、わいせつな画像や動画を相手方に握られて、拡散するぞと脅されるという被害は多いです。

このような被害にあった際には、どのように対応すべきでしょうか?

まず、自分で対応して、相手方に言われるがままにお金を支払うべきではありません

相手方は、被害者であるあなたの弱みを握っている状況ですので、相手の要求に従ったとしても、その後も何度も何度も脅され続け、お金を払わされ続ける可能性があります。

現に、長期間に渡って、同じ人から脅迫・恐喝の被害にあい、お金をむしり取られ続けている方もいらっしゃいます。

弁護士などの専門家に相談をして、早期かつ適切に対応することが必要です。

その上で、状況に応じて、弁護士を通じて被害届を提出したり、刑事告訴をすることにより、相手方についての刑事事件化を求めていくことも選択肢に入ってくるでしょう。

弁護士と警察で連携をして、民事・刑事で対応していくことが望ましいです。

脅迫・恐喝と被害届・刑事告訴については、以下の記事もご参照ください。

もちろん、弁護士が対応したとしても、わいせつ動画を拡散されるリスク自体が完全に消えることはありません。ただ、相手方としても、逮捕されて刑事責任を負うことや、民事上の損害賠償責任を負うことは避けたいと考えることが多く、弁護士からの警告に従うケースが多いです。

また、万一、リベンジポルノ画像・動画がネット上にUPされてしまった場合には、早急に削除請求をしていく必要があります。

リベンジポルトの削除依頼については、以下の記事をご参照ください。

Bio

弁護士 若林翔

弁護士法人グラディアトル法律事務所代表弁護士。
男女トラブルや詐欺、消費者被害、誹謗中傷など多岐にわたる分野を手掛けるとともに、顧問弁護士として風俗やキャバクラ、ホストクラブなど、ナイトビジネスの健全化に助力している。